皇太子殿下は護衛騎士を斯く愛せり
「信頼のおける者を後任に推薦いたしております」

事あるごと噂に上る近衛騎士の名は、お忍びで市中に出向いた時に、幾度も耳にした。

長年仕えた前任の護衛が、高齢を理由に辞任すると聞いた時、後任にはと真っ先に浮かんだのは、ソフィアだった。

そのソフィアが今、自分の護衛に就いているーー高揚しない方がどうかしている。

ルイスは次に市中へ出かけるのが待ち遠しくてならなかった。

ガラスの靴の注文をして10日ほどが過ぎ、靴屋がガラスの靴を持ち、誇らしげに訪れた。

ルイスに言われるまま、ソフィアはガラスの靴を試着した。

ソフィアはガラスの靴だーーさぞや履き心地が悪いだろうと思っていた。

その思いに反し、ガラスの靴はソフィアの足にしっくり馴染み、快適と言ってよかった。

「騎士さま、お気に召していただけましたか?」

靴屋はソフィアの様子を窺い、まんざらでもないような笑顔を向けた。
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