皇太子殿下は護衛騎士を斯く愛せり
「宮中では兎も角、今、吾は皇太子でも貴族でもない。どこぞの若だ。刺客などに狙われるはずもない」

「!? 若は危機感がなさ過ぎます。刺客の情報がどれほどのものか、ご存知ない。今もそこかしこに怪しい人影がございますのに」

「平常心で自然体であれば、そんな輩は手出しなどして来ぬ」

ルイスは飄々としてソフィアの肩を抱き、ピタリ身を寄せた。

「殿……わ、若」

「ソフィ。そなたは貴族の令嬢でもなく、吾の護衛でもない。吾がエスコートする、存分に楽しめ」

何と強引で呑気な方だろう。

ソフィアはルイスのペースにのせられて、戸惑うばかりだ。

ルイスに引き回されるまま。

普段は目もくれない装飾品や小物、若い娘たちが着る服、さらには巷で流行りの食べ物や飲み物を
片っ端から見て回った。

「若、よくそんなに食べられますね。私はもう……」
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