皇太子殿下は護衛騎士を斯く愛せり
ソフィアは叫び声に従うまま、子どもを追いかけ捕まえた。

髪はボサボサで伸びほうだい、浅黒い顔は汚れで黒いのか、もともと黒いのか定かではない。

薄汚れた擦りきれた服、泥だらけの細い足、膝小僧が妙に目立って見えた。

両手にはリンゴ、口回りはケチャップが派手についていたし、ポケットからは黒革の財布がはみ出していた。

「キミ、このお財布は?」

「……拾った」

ルイスとソフィアが子どもと話していると、「そのガキ放すなよ」と怒鳴る男が間近に迫っていた。

ソフィアは男に向かって財布を放り投げ、子どもの手を引いて走った。

「若、早く」

「おい、ソフィ!!」

「捕まったら袋叩きですよ」

「ソフィ、呉服屋に入れ」

ルイスはソフィアの背中に叫んだ。
< 23 / 37 >

この作品をシェア

pagetop