皇太子殿下は護衛騎士を斯く愛せり
「呉服屋?」

走りながら呉服屋を探す余裕などなく、ソフィアはただ全力で走る。

ルイスがギュッとソフィアの手を掴み、「こっちだ」と引き寄せた。

突然、倒れこむように、店内に入りこんできた3人に呉服屋の店員が数人、何ごとかと駆け寄った。

「若さま!?」

ソフィアは急いで店の外を窺った。

怒鳴っていた男の姿は見えなかった。

ソフィアは追っ手は諦めたのか? と思いつつ不安でたまらなかった。

「この子を着替えさせてやって」

ルイスは言いながら、店員に銀貨を握らせた。

「着替えの前に全身、洗わなきゃダメですよ」

中居が「来なさい」と子どもの手をひき、店の奥に入っていった。

「あのこは露店通りでたびたび騒ぎを起こしている浮浪者ですよ」

「身寄りは?」

「母親はたしかスラム街で男をとって生計にしていて、子どものことは放ったらかしで。父親はいないようで」
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