皇太子殿下は護衛騎士を斯く愛せり
「それから、アンネット。これから呉服屋の店主を窓口にし、吾が力になる」

「皇太子様……」

「調べがつくまでの当面の資金は、急ぎ届ける」

「お心遣い……ありがとうござ……」

アンネットのその先の声は涙で、言葉にならなかった。

「呉服屋に預けている子どもはどういたしますか」

感動の只中に、ソフィアが水を差した。

「呉服屋の店主の話ですと、園の子どもではないようでしたね」

「そうだな……あの子どもは城へ連れ帰り、母親へは使者を送り話をつけよう」

「承知いたしました」

園を出て、ルイスとソフィアはどっと疲れを感じた。

「ソフィー。戻ったら即、調査だ。国中の施設助成金を調査するよう大臣に申しつける。あの園管轄の領主は調べがつきしだい厳罰に処する」

「はい。殿下、お忍びの意味が少し解った気がいたします。民の声を直に聞く。この度の件は臣下からの申し伝えだけでは解らないことでした」

「そうであろう。吾は皇族と民は間に人を介して話すべきではないと思っている」

「はい。善きお考えにございます。これからもお伴させていただきます」

「よし!」
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