皇太子殿下は護衛騎士を斯く愛せり
6 ガラスの靴の令嬢
ルイスとソフィアが呉服屋に寄り、預けた子どもを連れて城へ戻る頃には、すっかり日が暮れていた。

ソフィアはなんと慌ただしく、驚きの連続の1日だったことだろうと、軍服に着替えながら思った。

ハイヒールを脱いだ足は、慣れないハイヒールで赤くなり、軍靴の履き口があたって痛かった。

ルイスが夕食と入浴を終え、寝室に戻ると言ったのは、いつもより2時間も早かった。

「ソフィー。今日は初めてのお忍びで、疲れたであろう。早く休め。明日は1日、調査に出かける。軽装で歩き易い靴で参じるがよい」

「かしこまりました。殿下も今日はゆっくりお休みになられますよう。差し出がましいとは存じ上げますが、くれぐれも寝室に書物や書類など持ち込まれませんように」

ソフィアは仏頂面から転じて笑顔でルイスに1礼した。

「そなたはまことに他の女人とは違うな。気持ちが良いほどハッキリ、モノを言う」
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