皇太子殿下は護衛騎士を斯く愛せり
「俺か靴屋が話すか、ソフィアが名乗らぬかぎり、ガラスの靴の令嬢は現れない」

ルイスは笑いが止まらなかった。

ルイスは靴屋と示し会わせて、ショーウィンドウに飾らせたわけでなかったが、否定する気さえ失せるほど、楽しくて仕方なかった。

「若、何をのんびりしておいでですか? 急ぎませんと、日が暮れてしまいますよ」

ソフィアは数十メートル先から後戻りし、ショーウィンドウを眺めているルイスの手を取った。

「今日は施設に関わる業者や、役所の聞き込みを若さまとして行うのですよ。ほら、こんなに。役人任せでは調査結果がいつになるかわからないとおっしゃられたのは、『若』ではないですか」

ソフィアはルイスの手を引き、小走り気味にきびきび歩いた。

「いつものようにあちらに寄り、こちらへよりしている時間はありませんのよ。しっかり仕事を遂行なさっていただかなくては」
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