皇太子殿下は護衛騎士を斯く愛せり
ダンスのステップは全て把握し、そつなく踊れるくらいの技術は身に付けている。

「みごとなものだ。そなたの父君は確か、伯爵だったか」

「はい」

「殿下。何故、私をダンスに誘われたのですか? こんなに目立っては任務に差し支えます」

「無粋なことを申すな。大人しく吾に身を委ね、舞踏に集中せよ」

「ですが……」

「シー」

ルイスはソフィアのリードをしながら、ソフィアの口元に、人差し指をそっと当てた。

「そなたを今、皇太子護衛とわかっているのは吾だけだ。耳を澄ませ、辺りを見回してみよ」

ソフィアはルイスに言われるまま、ステップを踏みながら、耳を澄ませ、辺りを見回した。

ーー皇太子殿下と踊っていらっしゃるのは、何処のご令嬢でしょう?

ーーみごとで、そつなく優雅な身のこなしだ。皇太子殿下に見劣りしない
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