皇太子殿下は護衛騎士を斯く愛せり
ーー何と可憐な

ーー何と凛々しいご令嬢か

ソフィアは何と言うことだろうと、ルイスの顔を見つめた。

「こんなに目立っては」

「良いではないか。軍服ばかりではもったいない。たまには着飾って女に戻るとよい」

「お戯れを、私は騎士で……」

「騎士にしておくには惜しい」

ルイスはソフィアの言葉を遮り、ソフィアから目を離さず、静かに囁いた。

「……殿下」

ソフィアの胸に熱いものがこみ上げた。

胸の奥底から突き上げてくる思いが何なのか、ソフィアには理解できない。

「そんな顔もできるのだな。軍服の令嬢などという色気のない通り名を忘れてしまいそうだ」

ルイスの言葉を聞きながら、この高揚感は何だろう。

ソフィアは騎士として過ごした日々の中では感じたことのない思いに戸惑っていた。

取り囲む人々の驚きや羨望の視線さえも、どうでも良い気がした。
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