私はあと何回、彼に恋をするのだろう 〜仕事とストレスと、そして恋と〜

第１章 出会い

「ほんとすみません！」

チームの若いメンバーが、私の前で頭を下げている。

どうしてこんなミスするわけ？
見落としにもほどがある！
あり得ない、この局面でミスするなんて！

そう言いたかった。

でも。
怒鳴ったところでどうにもならない。
きっと私にも、少なからず原因があるだろうから。

立場が上だからと私だけがイライラをぶつけても、後々、お互いに気まずい思いをするだけだと分かっている。
深呼吸して、静かに伝えた。

「私も見直してみるから、他にできるところ、進めてもらえる？」

「･･はい」

彼がミスした原因を考えつつ、黙々と開発中のシステムプログラムを目で追った。
３本目の途中で、ミスの箇所を見つけた。

ここだ･･。

「河田(かわだ)くん、見つけた！　ちょっと来て」

「は、はい！」

「ここ。このプログラムの組み方が違ってるの分かる？　明日の朝でいいから、ここ修正して、もう一度テスト結果取ってもらえないかな」

「ほんとだ･･似たプログラムから焦ってコピーしてきて、項目名を変えるの漏れてました。中村(なかむら)さん、やっぱりすごいです。こんな短時間で見つけるなんて」

「それはどうも」

「明日、朝イチでテストやります！　迷惑かけてすみません！！」

「頼むね。ひとりでできそう？」

「はい！　大丈夫です」

「次からは、安易にコピーして済ませないように」

「はい！」

「よろしく･･」

ため息まじりに手元の時計を見ると、２０時を回っていた。
マズイ、彼の残業時間をこれ以上増やせない。

「河田くん、もう遅いから帰って。今月の残業時間、制限ギリギリじゃない？」

「そうでした！　もう出ますね」

「うん、お疲れさま」

フロア全体を見渡すと、いくつかのチームがまだ残っている。

私のチームはシステムトラブル率が低いだけでなく、残業時間が少ないことも社内で評価されていた。