私はあと何回、彼に恋をするのだろう 〜仕事とストレスと、そして恋と〜
「あれ、もしかして中村さん?」

ビルを出たところで、ふいに声を掛けられる。
視線を向けると、そこには看護師の制服に上着を羽織った坂本さんがいた。

「え、坂本さん? どうしてここに?」

「あ・・僕、今日はこの近くのクリニックにヘルプ要員で来てて、いま休憩中で」

「そうだったんですね・・」

「中村さんは?」

「私は・・向かいのビルにオフィスがあるんですけど、ミーティングが詰まっていたので少し休みたくなって」

そう言った私に近づき、彼は私の顔をじっと見る。
そして小さく息を吐き、心配そうに言った。

「中村さん・・ちゃんとご飯食べてる? 顔色、あまり良くないよ」

「あー・・」

「忙しいんだ? 仕事」

「・・いま、ちょっと大変で」

「じゃ、これあげるよ」

そう言うと、彼は上着のポケットからマルチビタミンのゼリー飲料を出す。
私の左手をつかんで、はいどうぞ、と乗せた。

「こんなのでもいいから、ちゃんと摂らないとね」

「あ・・ありがとうございます」

「じゃ」

くるりと向きを変えて、彼は歩き出した。
その後姿を見て、ふと思う。

これは偶然?
こんなにタイミング良く、現れるもの?
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