私はあと何回、彼に恋をするのだろう 〜仕事とストレスと、そして恋と〜
「中村さん! こっち、フォロー頼む」

「部長、もう原因は分かってるんですか?」

「分かってる。だけど、その後のリカバリーが結構大掛かりで・・」

「私そこ見るので、部長は先方への説明を」

「そうだな、電話してくる」

予想はしていたけれど、メンバーは、それぞれ自分の目の前のことで精一杯のようだった。
私は、少し声を張ってフロア全体に呼び掛ける。

「みなさん、まずはタスクの整理をしましょう。
みんなで手分けして進めていきたいので、それぞれ飲み物用意して、5分後に会議室に集まってください!」

私はひと足先に会議室に入り、壁一面のホワイトボードに状況を書き連ねる。

誰が何をすればいいのか、どういう順番でやればいいのか、どんな結果が出れば終わりなのか・・をできるだけ分かりやすく書いた。

「中村さん、僕は3番のデータ作成でいいですか? 何件くらい作りますか?」

「そうですね・・念のため、全パターンの組み合わせでお願いできる?」

「了解です。30分もあれば作れます」

「ほんと? さすがだね。とっても助かる!」

会議室に集まったメンバーは、それぞれホワイトボードを確認し、自分のやる事を理解してデスクに戻っていく。

「中村さん、助かるよ。状況整理と成果物確認、引き続きよろしく頼む」

「はい、承知しました。先方は何て言ってました?」

「明後日の夜までに、システム処理結果が欲しいって。月曜の朝イチから業務に使いたいらしい」

「明後日の夜ですか・・・・。じゃあ、いま整理したタスクがひと通り終われば、今夜は解散で良さそうですね。続きは明日の昼からでどうですか?」

「そうだな。そうしよう」

ふと見ると、時計はもうすぐ23時だ。
路線によっては、そろそろ電車が無くなってくる。

「中村さん、タスク完了です!」

「お疲れさま。今日はもう帰って大丈夫。まだ電車ある?」

「え、いいんですか? てっきり徹夜かと」

「その代わり、また明日の昼からお願いね」

「はい、じゃお先です!」

ひとり、またひとりと、オフィスから人が帰って行く。
なんとか全員を、日付が変わる前に帰せる目処がついた。
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