私はあと何回、彼に恋をするのだろう 〜仕事とストレスと、そして恋と〜
メンバーが作業してくれた結果をひとつずつ確認しながら、明日の段取りを考える。

ひとり残ったオフィスで、私は大きなあくびをする。
溜まった疲れには、さすがに勝てない。

ホワイトボードを明日用に全て書き換えて、パソコンの電源を切った。
ちょうど24時を過ぎたところだ。

「もう寝ちゃったかな・・」

椅子に掛けていた彼の上着が目に入る。

寝ていたら申し訳ないと思いつつも、『仕事が終わったら連絡して』の言葉を思い返し、スマートフォンをタップした。
待っていてくれたのか、1回の呼び出し音で声が聞こえた。

「紗絵?」

「うん」

「仕事、終わった?」

「いま終わったところ」

「そっか、お疲れさま。もしかしたら朝までかと思ったけど、良かった。心配してたんだ」

「・・ありがとう」

「ね、紗絵、今から迎えに行くからそこで待ってて」

「え、ここで?」

「すぐ行くから。もう深夜だし、危ないから絶対オフィス出ちゃダメだよ」

「あ・・」

私の返事を待たずに、電話はプツッと切れた。

もしかしたら、朝まで連絡を待ってるつもりだったのだろうか。
彼なら、ありえそうだ。

ふふっ、と思わず微笑む。

考えてみたら、誰かに迎えに来てもらうなんて初めてのことかもしれないな。

深夜・早朝はタクシーの利用が許されているし、あえて迎えに来るなんて面倒なことをする人はいなかった。

思いが通じ合ったばかりだからかな・・。

そうだとしても、彼の優しさが素直に嬉しかった。
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