私はあと何回、彼に恋をするのだろう 〜仕事とストレスと、そして恋と〜
「あれ・・もう?」

トイレの個室で、思わず声が出た。
ここ何回か、生理の周期が短い。
貧血気味なのも、そのせいだろうか。

ため息と共にトイレを出ると、出てすぐの廊下でチームメンバーに声を掛けられた。

「中村さん、部長が中村さんを探してましたよ」

返事をする元気は無く、頷きで返した。
はぁ・・今度は何だろうか。

生理のことは気になったものの、部長のリクエストをクリアしていく度に、妙な達成感を感じている自分もいた。

まだまだできるかもしれない。
もっとできるかもしれない。
私にしか、できないんじゃないだろうか・・。

こんな思いが、私を突き動かす。

「部長、お呼びでしょうか?」

「ああ、中村さん。急なんだけど、今日の午後外出できる?」

「え? はい、大丈夫です」

「そうか、良かった。あと・・その前に少し話しておきたいことがあるんだ。ちょっと座って」

デスクのサイドテーブルに促される。
何だろう・・想像がつかない。

「実は、上島くんのことなんだけど、今月末で退職することになったよ。
今回、上島くん自身が体調崩してたんだけど、元々、親御さんも具合が悪かったらしくて、いい機会だから・・って」

「そう・・ですか・・」

「そこで、だ。会社としては、これからのことを考えなきゃいけない。俺としては、中村さんにマネージャーを任せたいと考えてる」

「え、マネージャーですか?」

「そう。しばらくは、今のまま中村さんのチームと上島くんのチームを見てもらうことになるんだけど、次の期の人事異動で中村さんを推すつもりだ」

マネージャー。
これまでの頑張りが、報われた・・。

「午後の外出っていうのも、客先が週末の対応を評価してくれて、担当変わったんですか?って聞かれたんだよ。気付いたんだろうね。
だから、このタイミングで中村さんを紹介しておこうと思って」

「そうでしたか・・。どうぞよろしくお願いします」

顔にも態度にも、湧き上がってくる嬉しさを出さないようにして、部長の席を離れた。


やった!
やったー!!
やったーーー!!


心の中で叫ぶ。

こんな気持ち、いつ以来だろうか。
嬉しすぎて手が震え、涙で肩が震えた。
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