私はあと何回、彼に恋をするのだろう 〜仕事とストレスと、そして恋と〜
着替えてリビングに戻ると、温かいお茶が入れてあった。

「紗絵、座って」

「・・うん」

「紗絵、俺に黙ってること・・あるよね?」

「・・うん」

「それ、話せる? 今日は身体が辛かったら、また今度でもいいよ」

彼の優しさが、固まった私の罪悪感を緩めていく。
知られてしまったことで、逆に少しだけ、気持ちが軽くなったような気がした。

「蓮斗・・怒らないの?」

「怒る? どうして?」

「だって、こんなになるまで・・」

「んー、そうだな」

「・・本当に、ごめんなさい」

彼は、ポンポンと私の頭を撫でた。
どんな思いで、そうしているんだろうか。

「怒ってこの状況を取り戻せるならいいけど、そうじゃないよね? 紗絵だって、いつも言ってるだろ?」

「え・・私?」

「そう。チームの子、怒ってる?」

「・・怒ってない」

「じゃあ、今どうして俺が怒らないかも、分かるよね?」

「・・うん」

「でも、俺もごめん」

「どうして蓮斗が謝るの? 悪いのは私なのに・・」

「・・言いづらい感じだったんだろ? だから黙ってたんじゃない?」

「蓮斗・・」

「良かったら話して。紗絵」

少しずつ。
思いつくところから、彼に話をした。


評価されて、昇進して嬉しかったこと。
一緒にお祝いしたかったけれど、身体のことがあって言い出せなかったこと。
夜勤や休日の出勤の時に、黙って仕事をしていたこと。
マネージャーになって、精神的な負荷が増えたこと。
お昼ご飯を食べる時間が取れないこと。
頻発月経のこと。
出血の量が驚くほど増えたこと。


「隠し事、多すぎだろ〜」

むにっ、と私の頬を軽くつかんで苦笑いした。

「・・・・ごめんなさい」

「ひとりでそんなに抱えてたのか・・。ごめんな、気付いてやれなくて」

「私こそ・・黙ってて本当にごめんなさい」

「紗絵、明日は休める?」

「え?」

「あの量で仕事行くのはマズイと思う。外で対処するの、いろいろ難しくない?」

「そう・・だよね」

「それで、今回の生理が終わったら病院行こう。一緒に行くからさ」

「うん・・・・」

もう一度『ごめんな』とつぶやいて、彼は私を抱きしめてくれた。

その腕の中が暖かくて、涙がこぼれた。
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