私はあと何回、彼に恋をするのだろう 〜仕事とストレスと、そして恋と〜
彼が勤務する病院の最寄駅で、カフェに入った。
といっても、お茶を飲みたかったわけではなく、椅子とテーブルが必要だったから。

さっき区役所でもらった用紙とペンをバッグから取り出し、該当の箇所を埋めていく。

なんとか書き終えたところで、ようやくコーヒーをひと口飲んだ。

最後に印鑑を押し、用意した封筒にしまう。

「これで・・よし」


ちょうど、18時を過ぎたところだ。
ほとんど飲まなかったコーヒーを片付け、私はお店を出て、彼の勤務する病院へ向かった。

日勤を終えた人たちの帰り時間なのか、職員通用口からは、ひっきりなしに人が出てくる。

ここまで来て、彼を見失いたくない。
私は隠れることもせず、通用口から少しだけ離れたところに立っていた。

10分ほど、待っただろうか。


あ・・!

え・・?


ふたりの目が合う。

「紗絵・・」

「・・来ちゃった」

「来ちゃったって・・どうして」

「蓮斗と、話がしたくて」

「話なら家でも・・」

「・・できない・・よね」

そう言った私から、彼は視線を外した。

「少し先に公園があるから、そこまで歩こう」

誘導するように、私の先を歩く。
そんな彼の後ろ姿を、久しぶりに見た気がした。

広い背中・・。

すっ、と彼の両脇から手を差し込み、私は彼の背中に抱きついた。
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