私はあと何回、彼に恋をするのだろう 〜仕事とストレスと、そして恋と〜
「紗絵」

彼は、お腹の辺りに置かれた私の手に触れて、振り向かずに私を呼んだ。

「紗絵、話って、何?」

「・・うん」

「手術のことなら、俺は・・」

「ううん・・そうじゃない」

「え? じゃあ、何? 他に話すことなんて・・」

「ある」

私は背中から離れて、彼の正面に回った。

バッグの中から、綺麗に包装された包みを取り出す。


「坂本 蓮斗さん」

「え? はい」

私は、すぅ、と息を吸った。




「私と、結婚してください」




彼の視線が、固まる。


「え・・?  紗絵、何言って・・・・」


「一生、大切にします」


「え・・?」


「イエスなら、これを・・受け取ってください」


「本気で・・言ってる・・?」


彼は少し震えながら、薄いブルーの包装紙に包まれた箱に手を伸ばす。


「開けてみて、いいのかな・・」


私は、こくんと頷いた。


「嘘・・・・なんで・・これ・・・・」


IWCのポルトギーゼ。
その中でも私が指定したデザインは、彼がいつか着けてみたいと話してくれた、憧れの時計だった。
< 42 / 85 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop