私はあと何回、彼に恋をするのだろう 〜仕事とストレスと、そして恋と〜
「私に、着けさせてくれる?」

「あ、うん、もちろん」

差し出した左手首に、時計を着けた。
よく似合っている。

「蓮斗、似合うね」

「紗絵・・でも、どうして・・」

「どうして・・って、プロポーズだから・・婚約・・時計?」

「プロポーズ・・・・。そっか、プロポーズ」

「うん」


「・・紗絵に、先越されるなんて」


そう言って彼は笑った。
その笑顔に、きゅんとした。


「でも、これで俺も言いやすくなった」


彼が、バッグから小さな水色の箱を出す。


「紗絵に見つからないように、いつも持ち歩いてたんだよな」


「え・・・・?」


彼は、私の目を真っ直ぐに見て、口を開いた。



「中村 紗絵さん・・・・俺と結婚してください。
俺が、一生紗絵を守ります」



彼が手を開くと、そこにはキラキラしたダイヤの指輪があった。


「左手、出して。紗絵」

「え? う、うん・・」


スッ、と薬指にひんやりした輝きが収まった。


「うん、よく似合う。紗絵、指輪はティファニーがいいって言ってたよね」

「・・言った。覚えてたんだ」

「紗絵だって、俺が憧れてた時計、覚えててくれたよね」

カッコいいよなぁ、とニコニコしながら時計を眺めている彼を見ながら、私は、もうひとつ用意したものに手を掛けた。
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