私はあと何回、彼に恋をするのだろう 〜仕事とストレスと、そして恋と〜
「ね、蓮斗」

「うん」

「私・・・・もうひとつ渡したいものがあるんだけど」

「もう・・ひとつ?」

「これなんだけど」

私は、彼に封筒を渡した。
封を開けて、カサカサと紙を開く。


「え、紗絵、これって・・・・」


彼が目を見開く。

封筒から取り出したものは、私のサイン済みの婚姻届だった。

「これから手術や入院のことで具体的な話をしたり、手続きを始めたりするから、蓮斗にも一緒に聞いてほしい。
その後のふたりのことも含めて、蓮斗とふたりで決めたいから」

「紗絵・・・・」

「だから、もし良ければ・・なんだけど・・・・」

広げた用紙にもう一度視線を落として、彼は何か考えているようだった。


「手術、本当はすごく怖い。もしかしたら、何かの間違いで、麻酔がかかったまま二度と会えなくなるかもしれない。
それでも、最後まで、蓮斗にそばにいてほしい・・だから・・」

「分かった。分かったから」

彼はやわらかく笑って、抱き締めてくれた。

「紗絵、ちょっとだけ冷静に考えて」

「え?」

「俺と紗絵は、出会ってからまだそんなに経ってないんだよ」

「・・うん」

「それでも、本当にいい? 後悔、しない?」

「・・・・」

「紗絵?」

「・・そっか・・ごめんなさい。私、自分のことしか考えてなかった。蓮斗は今すぐに・・なんて思ってなかったのか・・」

先走ってしまった自分に、ものすごい自己嫌悪を感じた。
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