私はあと何回、彼に恋をするのだろう 〜仕事とストレスと、そして恋と〜
「逆だよ、紗絵」

「え、逆?」

「そう。だって俺、指輪用意してたんだよ? いつからそう考えてたんだよ・・ってね」

そう・・か。
急に思いついて時計を買った私とは違って、彼はもっと前から用意してくれてたんだ・・。

「なんか、考えれば考えるほど、タイミングが見つからなくて、言い出せなくなってた。そのせいで気まずくして、ごめんな」

「蓮斗・・」

「俺が結婚を言い出すことで、逆に今の紗絵には負担になったり、困らせたりするかもしれないって思った」

「そう・・だったんだ。蓮斗が何を考えてるのか分からなくて、すれ違うことが多くなって、寂しかった・・」

じわっと涙が浮かぶ。
本当に寂しかったから。

「紗絵・・」

「私も・・ごめん。蓮斗に頼ってばかりで、困らせたよね」

「そんなことない。これから家族になるんだから、もっと頼って」

「家族・・?」

「そうだよ・・」

彼は私の頬に手を添えて、そっと唇を重ねた。

ああ、暖かい。
唇から、じんわり彼の優しさが伝わってくる。

「蓮斗と、家族になりたい・・」

「じゃあ、さ」

彼が耳元で囁く。


「今日、結婚しちゃおうよ」


え? 今日? いまから?

「ええぇーーー、本気?」

「うん。ダメ?」

「ダメってことはないけど・・」

「紗絵のお父さんとお母さん、いま電話できるかな・・」

「え!?」

「俺、紗絵のお父さんとお母さんに結婚のことを話すから、電話してくれる? 
もし許してもらえたら、今日中に婚姻届出して、紗絵と家族になるって決めたから」
< 45 / 85 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop