私はあと何回、彼に恋をするのだろう 〜仕事とストレスと、そして恋と〜
15分ほど、彼は両親と話しただろうか。

「紗絵とも話したいって」

ホッとした顔で、彼は私にスマートフォンを手渡す。

「もしもし、お父さん?」

『紗絵、蓮斗くんにひと通り聞いたよ。
身体が落ち着いたら、蓮斗くんと一緒に帰って来なさい。
お母さんの入院がまだ続いていて、手術の時も行ってやれないけど、蓮斗くんが任せてほしいと言ってくれて、お願いすることにしたよ』

「お父さん・・・・ありがとう」

『でも驚いたよ。仕事ばかりしてると思ってたら、いつの間に蓮斗くんみたいないい人を見つけたんだ?
電話だから顔は見えないけど、ちゃんと話のできる男だし、会うのが楽しみだよ。彼に・・大事にしてもらうんだぞ』

「・・うん」

『結婚おめでとう、紗絵』

父の言葉を聞いて涙が溢れた。
それを見た彼が再度電話に出て、父との話は終わった。

「紗絵のお父さん、喜んでくれて良かった。緊張したな〜」

ふぅ、とひと息ついて、まだ涙のおさまらない私の背中を撫でた。

「紗絵、うちの両親にも連絡していいかな?」

私が頷くと、すぐにご両親に電話を掛けたようだった。

「・・うん、そう。父さん、俺、結婚したい人がいるんだ。彼女のご両親にも、ちゃんと話をして許可をいただいてる。
・・もちろん。それで・・さ、もう離したくないから、先に籍だけ入れるよ。
え? あの時の・・うん。じゃまた連絡するから」

断片的に聞こえてきた内容だったけれど、『もう離したくないから』というフレーズに、改めて感激した。
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