私はあと何回、彼に恋をするのだろう 〜仕事とストレスと、そして恋と〜
「昨日譲ってもらったんで、今日はどうぞ」

「え?」

帰り道に寄ったコンビニ。
サンドイッチの棚の前で、ふいに声を掛けられた。

「サンドイッチ、好きなんですか? 僕も好きなんです。夜勤の合間に手軽に食べられるし」

この声・・。
確か昨日ここで・・。

「夜勤の合間・・。これから仕事ですか?」

「はい」

男性は、にっこりと微笑んだ。
その笑顔につられて、私も話し始める。

「あの・・サンドイッチが好きなら、今の時間だと、商店街のサンドイッチ専門店まだ開いてますよ」

「え? 専門店?」

「はい。知りませんか?」

「知らないです。結構種類あるんですか?」

「・・さすがにもう夜だから、売り切れてる種類のものも多いですけど、コンビニよりありますよ」

「そうなんだ。商店街のどこにあるんですか?」

「えっと、ここ出て左に・・。良かったら、一緒に行きますか?」

説明するのも何だか面倒で。
コンビニからそれほど距離もなく、世間話を少しする程度でお店に着いた。

「こんな近くにお店あったんですね。知らなかった。先月、引っ越してきたばかりで」

「人事異動ですか?」

「そうなんです。・・へぇー、美味しそうなのたくさんあるなぁ」

嬉しそうに眺める彼を横目に見ながら考えた。
夜勤のある仕事って、何だろうか。

ホテル、医療、製造、警察、消防、コールセンター・・。
あとはシステム監視のエンジニア?

「僕は・・サラダサンドとカツサンドと・・。あ、あなたも何か買いますか?」

「え、あぁ。私は・・メンチコロッケサンドを買おうかと」

「僕が一緒に払いますよ。連れてきてくれたお礼に」

「いや、そんな困ります! 自分で・・あ・・」

止めるのも間に合わず、彼は自分の分と一緒にお会計を済ませてしまった。
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