私はあと何回、彼に恋をするのだろう 〜仕事とストレスと、そして恋と〜
退院して数日は、好きな本を読んで、好きなことを調べて、ゆっくりご飯を食べて・・。
のんびりと生活していた。

「家のことも何もしなくていいから。ご飯も片付けも洗濯も、全部俺がするから!」

とにかく大事にして!と彼にきつく言われていたから、完全に自分のことしか考えていなくて、彼の様子はあまり気にしていなかった。


「ただいま・・」

「蓮斗、おかえり」

「あ、うん。紗絵、具合どう?」

「大丈夫。痛みとか無いし」

「薬は? ちゃんと飲んでる?」

「うん。忘れずに飲んでるよ」

「そっか」

「蓮斗、お風呂入るよね? いま沸かす・・」

「あ、いい。シャワーで済ますよ」

「そう? 蓮斗ご飯は? まだなら一緒に・・」

「あ、いらない。病院で食べてきた」

珍しいな、と思った。
病院で食べてくるなんて、今までほとんど無かったから。

「紗絵・・ごめん。俺、明日も仕事なんだ」

「え? そうなの?」

「毎日ひとりにしてごめんな・・。いま看護師が足りなくてさ。俺、来週休み取るし、今のうちにやれることやっておこうと思って」

「そうなんだ・・」

「だから、少し疲れてて・・今日は、もう寝るよ」

「え? あ、うん・・」

「おやすみ、紗絵」

大変なんだな、と初めて思った。
自分も仕事をしている時は、私だって忙しいし、私だって大変だし、お互い様くらいにしか考えてなかった。

音のしなくなった寝室にそっと入ると、彼は真っ暗な部屋で、布団に潜り込んで寝ていた。

さっきは少し疲れて・・と言っていたけれど、実際はかなり疲れているんだろうか。
シャワーにも入らずに、そのまま寝てしまったから。

きっと、朝も早いのだろう。

朝起きた時、おにぎりくらいなら食べられるかもしれない。

冷蔵庫をのぞくと、おにぎりの具になりそうなものが3種類くらいある。
ささっと作り、テーブルに置いた。
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