私はあと何回、彼に恋をするのだろう 〜仕事とストレスと、そして恋と〜
朝、目が覚めると、バスルームからシャワーの音が聞こえる。
起き上がってリビングに行くと、バスルームから髪の濡れた彼が出てきた。

「あ、紗絵起こしちゃった? ごめんね」

「あ、ううん、全然」

早く眠ったからか、彼は昨日の夜よりもすっきりした顔をしていた。
でも、明らかに疲れの見える表情だ。

「紗絵、おにぎりありがとう。・・実は昨日の昼から、時間取れなくて食べてなかったんだよね」

「え? 食べてきたって・・」

「あれ、そうだっけ? あー、そろそろ支度して出ないと。あんまり一緒にいる時間なくて、ほんとごめん。旅行行ったら、たくさん時間とろう」

「あ、あの、旅行のことなんだけど」

「ごめん、それ帰ってからでもいい?」

「あ、うん・・もちろん」


彼が出掛けた後、ふとカレンダーが目に入った。
あれ? 休みの印がほとんど無い・・。

よく見ると、私が入院してから、ほとんど休みが無いことに気付いた。
旅行で休むために、頑張ってたんだろうな。

だから、あんなに疲れてたのか。
人手不足も本当なんだろう。彼なら、自分が出ると手をあげそうだ。

何か、私にしてあげられることは無いかな・・。

楽しみにしている旅行の計画を立てようと、交通機関やホテル、観光地をあちこち検索しているうちに、あっという間に夕方になっていた。


ブーッブーッブーッ。


電話?
スマートフォンが、見慣れない固定電話の番号を表示している。

早く出てと言わんばかりに震え続け、私は通話ボタンをタップした。


「・・もしもし?」

「あの、こちらは坂本蓮斗さんが勤務する大学病院の事務の者ですが、奥様でしょうか?」

「はい、そうですが、主人に何か・・?」

「今すぐこちらに来ていただけますか? 坂本さんが患者さんをかばって階段から・・・・」


その先は、気が動転してよく聞き取れなかった。


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