私はあと何回、彼に恋をするのだろう 〜仕事とストレスと、そして恋と〜
「なんだかすみません。そんなつもりじゃなかったのに・・」

「いや、全然。教えてもらえて良かったです。夜勤の時は毎回来ようかな」

「あの、お仕事って・・」

「ああ、看護師なんです。駅前から、バスで10分くらい行ったところに大学病院ありますよね? あそこに勤めてて」

「看護師さん・・なんですか」

「男なのに、って思ったでしょ?」

「えっ」

「ほら、思ってる」

まぁ確かに、思ったけど・・。
でも思ったのは、男性だからではなく、どうして看護師を選んだのか、って。

「わっ、そろそろ行かないと夜勤に間に合わないな。僕は坂本(さかもと)です。あなたは?」

「・・中村です」

「中村さん、お店教えてくれてありがとうございました。じゃ」

「あ、こちらこそサンドイッチありがとうございます。お仕事・・行ってらっしゃい」

頑張って・・というのもおかしな気がして。
思わず、『行ってらっしゃい』と口にしていた。

「行ってらっしゃい・・。すごい久しぶりに言われた気がします。行ってきます!」

彼は・・坂本さんはバス停に向かって走っていく。
その後ろ姿を見送り、手元に残ったメンチコロッケサンドをバッグにしまった、その時。

グラリ・・と、景色がゆがんだ。

めまい・・だ。
最近、増えてきた。

このところ、ちゃんと薬を飲んでいなかったからだろう。また飲まなきゃ。
頭を左右に振り、めまいが治まったことを確認してから家に帰った。
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