私はあと何回、彼に恋をするのだろう 〜仕事とストレスと、そして恋と〜
彼に初めて会ったのは、1年くらい前のことだった。

偶然が何度も何度も重なって、あっという間に一緒にいることが日常になって、『紗絵』と呼んでくれる時の優しい笑顔が何よりも好きだった。

一生守ると言ってくれた言葉の通り、彼はいつだって私を気遣ってくれたのに。

私は、どうだろうか・・。
一生大切にすると言ったけれど、彼を大切に考えていただろうか。

自分のことで精一杯だったんじゃないだろうか。

もっと、ちゃんと、大切にすれば良かった。
そしたら、こんなことにならなかったんじゃないか・・・・。

後悔した。
涙が出た。

いまさらだと思った。
声を上げて泣いた。

泣いてもどうにもならないとしても。
今は、他にできることなんて無かった。

誰に慰められるわけでもなく、しばらく泣き続けた私は、気が抜けたように彼のベッドサイドにもたれて眠ってしまった。


『紗絵、そんなに泣かないで』


これは夢の中、だろうか。
私の大好きな彼の笑顔がそこにある。


ふいに肩をポンと叩かれた気がして、ハッとして目が覚めた。

壁に掛かった時計を見ると、面会時間の終わりを指している。
いけない! もう帰らなきゃ。

「ごめんなさい。支度してすぐ出ますから」

そう言って振り返ると、そこには誰もいなかった。確かに、肩に触れられた感触があったのに。

もしかして・・蓮斗!?

ほんの少しだけ期待したものの、目の前に横たわる彼に変化は無い。

ふぅ・・。
落胆のため息をついて、椅子から立ち上がった。

「蓮斗、また明日来るね・・」

そう伝えて、私は病室を出る。

何の希望も持てないまま、家に帰った。
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