私はあと何回、彼に恋をするのだろう 〜仕事とストレスと、そして恋と〜
文字盤のガラスが割れた動かない時計を、しばらく眺めていた。
彼はこのまま、私の元からいなくなってしまうのだろうか・・。
ふと、思った。
彼もきっと、こんな想いを抱えていたんだろう・・と。
私は病気で彼は事故だけれど、失うかもしれない不安に変わりはない。
どんなに想いを馳せたとしても、実際その立場になってみなければ、実感できないものなのだと改めて思った。
彼を、全然分かっていなかった。
いつもいつも、自分のことばかりだった。
「蓮斗、ごめん・・」
『いいんだよ、紗絵』
そう言って欲しくて、つぶやきながら彼を思い浮かべた。
寂しい。
寂しい。
明日は、目を覚ましてくれるだろうか・・・・。
面会時間を待って、病院に向かう。
そっと病室のドアを開けると、昨日と同じ状態の彼がいた。
意識がはっきりしたら連絡する、と言われていたから、連絡が無いということは『まだ』なのだ。
分かってはいたけれど、ベッドに横たわったままの彼を見てため息が出た。
「坂本さんの奥さまですよね?」
後ろから、師長さんの声がした。
「心配よね・・」
「・・はい」
「そういえば、おふたりは来週新婚旅行だったのかしら?」
「え?」
「来週お休み申請していたし、この『新婚旅行・フォトプラン』にペンで印が付けてあったから」
そう言ってパンフレットを見せてくれた。
確かに彼の字で、あちこちにメモが書かれている。
いつの間にこんな計画を・・。
「腕を骨折しているし、今日目を覚ましたとしても、旅行はまたの機会かな」
「・・そう・・・ですね」
「でも、羨ましい。奥さまに内緒で計画立てるなんて素敵よね。坂本さん、患者さんにもとっても優しいし、奥さまにもすごく優しいんだろうなぁって」
「はい・・」
「奥さまの方からプロポーズされたって聞いたわ。すごく嬉しそうに婚姻届を持ってきて、『師長、今すぐにサインしてください!』って。
あの時は本当に驚いたけど、私まで幸せな気持ちになったのよ」
「・・恥ずかしい。ご迷惑お掛けしました」
「ふふ。早く意識がはっきりするといいのだけど」
じゃあまた来るわね、と師長さんは病室を出ていった。
彼はこのまま、私の元からいなくなってしまうのだろうか・・。
ふと、思った。
彼もきっと、こんな想いを抱えていたんだろう・・と。
私は病気で彼は事故だけれど、失うかもしれない不安に変わりはない。
どんなに想いを馳せたとしても、実際その立場になってみなければ、実感できないものなのだと改めて思った。
彼を、全然分かっていなかった。
いつもいつも、自分のことばかりだった。
「蓮斗、ごめん・・」
『いいんだよ、紗絵』
そう言って欲しくて、つぶやきながら彼を思い浮かべた。
寂しい。
寂しい。
明日は、目を覚ましてくれるだろうか・・・・。
面会時間を待って、病院に向かう。
そっと病室のドアを開けると、昨日と同じ状態の彼がいた。
意識がはっきりしたら連絡する、と言われていたから、連絡が無いということは『まだ』なのだ。
分かってはいたけれど、ベッドに横たわったままの彼を見てため息が出た。
「坂本さんの奥さまですよね?」
後ろから、師長さんの声がした。
「心配よね・・」
「・・はい」
「そういえば、おふたりは来週新婚旅行だったのかしら?」
「え?」
「来週お休み申請していたし、この『新婚旅行・フォトプラン』にペンで印が付けてあったから」
そう言ってパンフレットを見せてくれた。
確かに彼の字で、あちこちにメモが書かれている。
いつの間にこんな計画を・・。
「腕を骨折しているし、今日目を覚ましたとしても、旅行はまたの機会かな」
「・・そう・・・ですね」
「でも、羨ましい。奥さまに内緒で計画立てるなんて素敵よね。坂本さん、患者さんにもとっても優しいし、奥さまにもすごく優しいんだろうなぁって」
「はい・・」
「奥さまの方からプロポーズされたって聞いたわ。すごく嬉しそうに婚姻届を持ってきて、『師長、今すぐにサインしてください!』って。
あの時は本当に驚いたけど、私まで幸せな気持ちになったのよ」
「・・恥ずかしい。ご迷惑お掛けしました」
「ふふ。早く意識がはっきりするといいのだけど」
じゃあまた来るわね、と師長さんは病室を出ていった。