私はあと何回、彼に恋をするのだろう 〜仕事とストレスと、そして恋と〜
「さ・・ぇ・・おも・・ぃ・・ょ」

「わっ、ごめん! つい嬉しくて」

もう少し話していたかったけれど、ひとまず意識が戻ったことを伝えなければと、ナースコールを押した。
すぐに看護師さんの声が聞こえる。

『坂本さん? どうされました?』

「あのっ、意識が戻ったようで、少し会話ができました」

『本当ですか? すぐ先生を呼びますね!』


ほんの2、3分で病室のドアが開き、医師と師長さんが入って来る。
機器の数値や意識の状態を確認しながら、医師は『もう大丈夫だよ』と言ってくれた。

それを聞いて力が抜けた私は、ペタンと床に座り込んでしまった。

「蓮斗・・本当に良かった」

「奥さまも、これでようやく一安心ね」

師長さんが私の肩を持ち上げるようにして、すぐ近くにある椅子に座らせてくれた。

「少し様子を見て、問題なければ徐々に機材を外していきます。また後で来るけど、もし変わったことがあれば、すぐ呼んでください。
・・坂本くん、良かったね。奥さん、相当心配してたよ」

医師はポンと彼の肩を軽く叩くと、師長さんと一緒に病室を後にした。


「さ・・ぇ・・ちかく・・に・・きて」

「うん」

私はベッドサイドの椅子に座り直した。

彼の手が、私の上半身をベッドに引き寄せ、もたれさせた頭を、ゆっくりと撫でる。


「さぇ・・めざめの・・キス・・は?」

「えっ?」

「して・・もらえ・・ない?」

「ううん、する」

私は身体を起こし、彼の顔に近づく。

一度目は頬に。
そして二度目は、少しカサついた唇に。

「めが・・さめて・・よかった」

彼は一瞬目を閉じて、嬉しそうにつぶやいた。
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