私はあと何回、彼に恋をするのだろう 〜仕事とストレスと、そして恋と〜
「『紗絵』って呼んでくれる、蓮斗の声が好きだよ。
『紗絵』って呼んだ後に向けてくれる、蓮斗の優しい笑顔が好き。大好き」

彼の目を真っ直ぐに見て伝えた。

「え?・・それ・・だけ?」

彼が不思議そうな顔をした。

「それだけ・・って、どういうこと?
私、何かおかしなこと言ったかな・・」

「そうじゃ・・なくて・・さ」

「うん」

「それだけ・・で、いいのかな・・って」

ほんの少し、彼の瞳が揺れた気がした。

もしかして、不安・・なの?
こんな状態の自分でもいいのか・・なんて、考えているの?

こんなふうに話をして、いまみたいに笑いかけてくれるだけで充分なのに・・。

「それだけでいい。『紗絵』って呼んでくれるの、待ってたんだよ。
他には何にもいらない。ずーっとそばにいてね」

「・・きいてみて・・よかった、さえ」

「うん」

「さえ、ずーっと・・おれのこと・・すきで・・いて」

「蓮斗・・」

「おれは・・ずーっと・・さえが・・すき・・だよ」

表情はニコニコとしていたけれど、さすがに少し疲れたのか、不安がやわらいだのか、うとうとし始めた。

私はベッドを降りて、彼を起こさないようにベッドの傾きを元に戻す。

彼が眠ったのを確かめてから、私はそっと病室を出て、師長さんの部屋を訪ねた。
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