私はあと何回、彼に恋をするのだろう 〜仕事とストレスと、そして恋と〜
日に日に回復していく彼のもとに通うのが、毎日の楽しみになった。
面会時間フル滞在なので、たくさん話せるのが嬉しい。

「あ、そういえば・・蓮斗に聞きたいことがあったんだ」

「ん、なに?」

「蓮斗が看護師になったのって、どうして?」

「えっ!!」

「え、そんなに驚くようなこと?」

「あ、いや、そうじゃないんだけど・・」

うーん、と目を閉じて考えを巡らせるようにした後、意を決したようにポツリとつぶやいた。


「紗絵に・・出会うため、かな・・」


え?

そんな真面目な顔で言われたら、冗談でもドキドキしちゃうよ。

「またまた〜。今度でいいからちゃんと教えてね」

思わず茶化してしまう。

「本当・・なのになー」

「じゃあ、そういうことにしとく」

「まったく・・」

彼は苦笑する。

自分で振っておきながら、この話題を続けるのが恥ずかしくなってきて、他の話題を出す。

「あ、蓮斗、時計のことなんだけどね。文字盤のガラスが割れちゃったの。床にぶつけたからだと思うんだけど」

「ふーん」

「調べてみたら、ガラスだけなら2〜3万もあれば修理できるみたい。蓮斗が入院してる間に、修理に出しちゃうね」

「・・紗絵、話そらしたな?」

「えっ、そんなことない、よ・・」

「さっきさ、『紗絵に・・出会うため』って言ったろ?」

「う、うん・・」

彼はベッドサイドの椅子に座っている私の頭に手を伸ばし、ポンポンと撫でながら、驚きのひと言を口にした。


「紗絵は・・何も思い出さない?」
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