私はあと何回、彼に恋をするのだろう 〜仕事とストレスと、そして恋と〜
「え?」

何も思い出さない?

どういう意味?

何を、思い出すの?

「それって・・。私、何か大事なことを忘れてるの?」

「俺の記憶に間違いがなければ・・だけどね」

私に出会うために、看護師になった・・?


「ねぇ、さっきの・・」

「うん」

「私に出会うため・・っていうのは」

「うん」

「もっと正確に言うと・・私に『もう一度』出会うため?」

「さぁ、どうだろうね」

ふふっ、と彼が笑った。


看護師・・ということは、おそらく病院だ。
忘れられないようなインパクトのある、病院の思い出・・。

そう、私は子供の頃に、入院と手術の経験があった。
あれは10歳の頃。

虫垂炎・・いわゆる盲腸で手術を受け、夜中に熱が出たんだった。
苦しくて、看護師さんに薬を飲ませてもらったり、身体を冷やしてもらったりした。

あの時の看護師さんは女性だったし、彼との共通点なんて無かったはず・・。

「紗絵、眉間にシワが寄ってるぞー」

「蓮斗、邪魔しないで。いま真剣に考えてるんだから」

「紗絵、いいこと教えてやろうか」

彼がニヤニヤ笑う。

「紗絵は、『蓮ちゃん』って呼んでたぞ」


え? 蓮ちゃん?
< 72 / 85 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop