私はあと何回、彼に恋をするのだろう 〜仕事とストレスと、そして恋と〜
コンコンコン。

「坂本さん、採血しますねー。体調どうですか?」

彼の同僚の看護師さんが入ってくる。

「うん、だいぶいいです。血液検査が問題なければ、家に帰れるのかなー」

看護師さんと彼が、採血しつつ病棟の様子や同僚の話をしているのを遠目に見ていた。

「そうそう、主任がご結婚されるそうですよ」

「へー、そうなんだ。 お相手は?」

「麻酔科のドクターなんですって」

「うちは内科なのに、どうやって麻酔科のドクターと・・」

「ほんとですよね〜」


採血、結婚、ドクター・・。


あ・・・・。

記憶が、よみがえる。


「紗絵? どうした?」

「思い出した・・」


あの時。
カーテンの内側で、担当の看護師さんに採血してもらいながら、お医者さんと結婚することになったっていう話を聞いていた。

『紗絵ちゃんもお医者さんと結婚したい?』

『私は、看護師さんと結婚したいなー』

『えー、どうして?』

『だって、お医者さんは治療の時しかいないけど、看護師さんはいつもそばにいてくれて、優しくしてくれるから』

『そっかー、じゃあこないだの蓮ちゃんみたいに、紗絵ちゃんがつらい時に、優しく助けてくれる人が現れるといいね』

『うん。でも、もし蓮ちゃんが看護師さんになったら、私、蓮ちゃんと結婚しようかなー』


彼は、きっとこの会話をどこかで聞いていたんだ・・。
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