私はあと何回、彼に恋をするのだろう 〜仕事とストレスと、そして恋と〜
10歳の私にとって、苦しんでいた時に現れた蓮ちゃんは、まるで王子様のようだった。

「蓮斗、看護師さんと私の会話を聞いてたのか〜。いまさらだけど恥ずかしいな」

「たまたま忘れ物を取りに戻ったら、紗絵と看護師さんが話してて。聞くつもりは無かったんだけど、つい・・。
聞いてたってバレちゃいけない気がして、声が途切れたところで、あわてて病室の外に出たんだよ」

ふふっ、と彼が笑う。

「紗絵、いつか俺に気付くのかなって様子見てたけど、全然その気配が無くてさ〜」

「あー、ごめん。それはほんとごめん!!」

「でも・・さ」

「ん?」

「俺、嬉しかったよ。俺に気付いてないのに、紗絵が俺のこと好きになってくれて。俺と結婚したいって思ってくれたこともね」

「蓮斗・・」

「俺はわりと早くに、あの紗絵ちゃんだって気付いてたから・・好きになるの、止められなかったなー」

全て偶然のようで、それでいて必然だったんだ・・。
気づいた彼も、気づかなかった私も。


「ねぇ蓮斗」

「何?」

「キスしても・・いい?」

こんな奇跡のような話をしていたら、触れたくなるに決まっている。

「何回?」

「え、何回って・・じゃあ・・3回かな?」

「・・全然足りない」

「えー?」

「はぁ、もう家に帰りたいな。いつ帰れるんだろう」

「どうして?」

「だって、キスだけじゃ済まないよ。こういう感動の場面は、やっぱり・・そうなるだろ?」

「蓮斗ったら・・」

彼の艶っぽい視線に、重なった唇が熱くなった。
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