私はあと何回、彼に恋をするのだろう 〜仕事とストレスと、そして恋と〜
「中村さん、ちょっと会議室に来てもらえるかな?」

「はい」

部長に呼ばれたものの、これといってすぐに思い当たることは無い。
何だろうか。

「何か・・あったんですか?」

「あ、うん。まぁ座って」

「はい」

「いや、実はさ。上島くんが体調崩しちゃって、2週間ほど休むことになったんだ。
それで、その間のリーダーを誰にするかっていう話になったんだけど、中村さん・・やってもらえないかな?」

「え、私・・ですか?」

とっさに拒否反応が出る。
よりによって、上島チーム・・。

システムトラブルが多いせいで常に人手が足りず、開発作業も遅れ気味だ。

流れをつかんでいる自分のチームはいいとしても、ただでさえ大変な時期の上島チームを管理するなんて、いまの私にできるだろうか。

「あの、他にどなたか適任の方が・・」

「うん・・ただ、中村さんも分かってると思うけど、どのチームも厳しくてね。もう中村さんしかいないよねって」

「・・・・そうですか」

「なんとか、2週間よろしく頼むよ。ちゃんとフォローするから」

「・・分かりました」

「良かった。詳しいことはサブリーダーに聞いて」

部長が会議室を出ていった後、立ち上がる元気も出ず、しばらく椅子に座っていた。
これから起こることを想像すると、それだけで冷や汗が出る。

上島さんの体調不良は、身体だろうか、メンタルだろうか・・・・。

上手くいっていないチームを軌道に乗せるのは、ものすごいエネルギーを消費する。
身体にしろメンタルにしろ、上島さん自身も疲れ切ってしまったのだろう。
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