私はあと何回、彼に恋をするのだろう 〜仕事とストレスと、そして恋と〜
バスで10分ほど走った頃、車窓から綺麗にライトアップされた教会が見えた。

「蓮斗、あれ見て!」

「ん、何だろ。綺麗だな・・見にいってみるか?」

彼が降車ボタンを押し、次のバス停で降りた。
近づいてみると、中も明かりが付いていて、窓のステンドグラスがキラキラしている。

「中、入ってみようか」

「うん」

彼の後について中に入った。
厳かな雰囲気に、思わず立ち止まる。

「紗絵?」

先を歩いていた彼が、振り返って私を呼ぶ。
もう一度呼んでほしくて、黙って彼を見つめる。

「ほら、紗絵」

私に近づいて、手を差し出す。

ゆっくりと祭壇に向かって歩きながら、教会の雰囲気にも後押しされ、彼が転落してケガをした時から心に引っ掛かっていたことを口にした。

「ね、蓮斗・・。私、蓮斗にプロポーズした時、一生大切にしますって言ったのに・・全然約束守れてなくて、ごめん」

「え?」

「いつも自分のことばっかりで・・。ほんとに・・ごめんなさい・・」

「ね、紗絵」

彼が、繋いだ手をきゅっと握った。

「俺、紗絵になんてプロポーズしたか覚えてる? 『俺が一生、紗絵を守ります』って言ったんだ。どんな紗絵だって、俺が一生守るから大丈夫だよ」

「蓮斗・・」

じわじわっと涙があふれ、ほろりとこぼれた。

「紗絵・・。
俺は紗絵がそばにいてくれたら、それで幸せ。ただ・・」

「・・ただ?」

「これは俺のワガママなんだけど、紗絵より先に死にたい。いつか『俺を置いて逝かないで』って言ったけど、あれ結構本気。
紗絵がいない人生なんて、耐えられないから」


その時。
ガタン、とドアが開く音がして、黒い服を着た若い男性が入って来た。

「こんばんは」
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