冷血公爵様が、突然愛を囁き出したのですが?
「マリエーヌ……君を愛している」

「はい、もうしわけありま…………は?」
「な!?」

 突拍子もなく言われた公爵様の言葉に、私だけでなく、集まってきていた使用人達も驚きの声を上げた。

 あいしてる? 今、あいしてるって言ったの……? きみ? わたしを?
 公爵様。
 きっとまだ熱が下がっていないんだわ。
 熱が高すぎておかしくなってしまったんだわ。

 私はその熱を確認しようと、公爵様の額に右手を伸ばした。だけどそれが額に触れる前に、公爵様に手を掴まれた。
 
「!?」
「ああ、マリエーヌ」

 公爵様はそのまま私の手のひらに自分の頬を擦り寄せてきた。
 涙で濡れた頬は、冷たいと思ったのは一瞬で、すぐに尋常じゃない熱を帯びている事が分かった。

「公爵様。あの……まだお熱が高いようです。すぐにお部屋で休まれた方が良いと思うのですが」
「ああ、それはきっと君の手に触れたから、嬉しさで僕の体温が舞い上がってしまったようだ」

 …………いや、公爵様? 絶対、熱、あると思いますよ?
 
 私が怪訝な顔で見つめていると、公爵様は切なく顔を歪めながらも、今までに見た事が無い程の優しい表情で微笑んだ。
 そんな風に微笑まれて、私はドキッと音が出てしまったかと思う程に大きく心臓が跳ねた。
 公爵様は、性格は恐れられていたけれど、その容姿は一級品。
 初めて見た時は『容姿端麗』という言葉以上の表現を探してしまうくらい、その怖く思える程の美しさに言葉を失った。
 
 そんな公爵様に優しく微笑まれて頬を染めない女性がいるだろうか。いや、絶対いないと思う。
 公爵様は、私の右手を握ったまま跪き、私を見上げた。

「マリエーヌ。どうか僕ともう一度、結婚してくれないだろうか?」

 そう告げた公爵様はとても真剣な表情で、私の答えを待っている様に見える。
 
 どうしよう……やっぱり熱でおかしくなっちゃってるんだわ。

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