冷血公爵様が、突然愛を囁き出したのですが?
「おはよう、マリエーヌ。薔薇の花が綺麗に咲いていたから摘んで来たんだが……やはり君の美しさには見劣りしてしまうな」
公爵様は毎朝、庭で摘んで来たお花の束を綺麗に包んで私の部屋に持ってきた。
飾り気のなかった私の部屋は、瞬く間にお花で埋め尽くされた。
「マリエーヌ、贈ったドレスは着てみてくれたか? 君ならどんなドレスも似合うと思って選びきれず頼みすぎてしまった。だが、気に入った物がなければすぐに別の物を用意しよう」
連日、山の様にドレスが大量に送られてきた。宝石やアクセサリー等、色々と多すぎて全てを確認できていない。
空っぽ同然だったクローゼットにも収まりきらず、空いていた部屋の一室が私のドレス専用のお部屋になった。
「マリエーヌ、今日は天気がいいな。きっと君のおかげだ。今日は昼食を食べたら散歩に行こう」
良い事があればそれは全て私のおかげと言ってくる。
ここまでくるとちょっと意味が分からない。
「奥様って本当に公爵様に愛されてますのね! 羨ましいですわ!」
「そう……なのかしら?」
新しく私の専属侍女となったリディアが、私の髪を梳かしながら、はしゃぐように声をかけてくる。
公爵様の様子が変わった次の日には、仕えていた使用人達はシェフや庭師も含めてほとんどが屋敷を去って行った。
そしてその日のうちに、新しい使用人が次々と屋敷を訪れて来た。
新しく入った使用人達は皆、私にとても優しく接してくれた。
公爵様は連日、甘い言葉と共に私の部屋を訪れてきた。
仕事の合間にも、隙を見て私の元へやってくると、甘いささやきを残して戻って行った。
誰かに愛される事に慣れていない私は、彼から向けられる愛情表現に上手く応えられていない。だけど、戸惑う私にも公爵様は変わらず優しかった。
ずっと孤独だった。このまま一人寂しく一生を終えるのだと思っていた。
だけどあの日、一人ぼっちだった私に、公爵様は手を差し伸べてくれた。
公爵様の手は救いの手だ。
私を孤独という闇から救い出してくれた、唯一の光。
その時、正午を知らせる鐘の音が響いた。
「あ、そろそろ来られる頃ですね!」
リディアの声とほぼ同時に、ガチャリと部屋のドアが開いた。
「マリエーヌ、早く君に会いたかったよ。今日は天気がいいから中庭で食事をしようか」
幸せそうな笑みを向けて、今日も公爵様は昼食の誘いにやってきた。
公爵様は私の手をとり、その甲にキスを落とした。
「マリエーヌ、愛しているよ」
あの日以来、その言葉を何度聞いただろうか。
それなのに、公爵様はとても嬉しそうにその言葉を私に贈り続けている。
私もいつか、あなたにその言葉を贈りたい。
私もあなたを喜ばせたい。
私に幸せを運んできてくれたあなたを幸せにしたい。
その日はきっと遠くない。
名前を呼ばれる度に高鳴るこの鼓動の理由は、きっとそういう事でしょう?
だけど、どうしても分からないのです。
公爵様。
一体あなたに何があったのでしょうか?
公爵様は毎朝、庭で摘んで来たお花の束を綺麗に包んで私の部屋に持ってきた。
飾り気のなかった私の部屋は、瞬く間にお花で埋め尽くされた。
「マリエーヌ、贈ったドレスは着てみてくれたか? 君ならどんなドレスも似合うと思って選びきれず頼みすぎてしまった。だが、気に入った物がなければすぐに別の物を用意しよう」
連日、山の様にドレスが大量に送られてきた。宝石やアクセサリー等、色々と多すぎて全てを確認できていない。
空っぽ同然だったクローゼットにも収まりきらず、空いていた部屋の一室が私のドレス専用のお部屋になった。
「マリエーヌ、今日は天気がいいな。きっと君のおかげだ。今日は昼食を食べたら散歩に行こう」
良い事があればそれは全て私のおかげと言ってくる。
ここまでくるとちょっと意味が分からない。
「奥様って本当に公爵様に愛されてますのね! 羨ましいですわ!」
「そう……なのかしら?」
新しく私の専属侍女となったリディアが、私の髪を梳かしながら、はしゃぐように声をかけてくる。
公爵様の様子が変わった次の日には、仕えていた使用人達はシェフや庭師も含めてほとんどが屋敷を去って行った。
そしてその日のうちに、新しい使用人が次々と屋敷を訪れて来た。
新しく入った使用人達は皆、私にとても優しく接してくれた。
公爵様は連日、甘い言葉と共に私の部屋を訪れてきた。
仕事の合間にも、隙を見て私の元へやってくると、甘いささやきを残して戻って行った。
誰かに愛される事に慣れていない私は、彼から向けられる愛情表現に上手く応えられていない。だけど、戸惑う私にも公爵様は変わらず優しかった。
ずっと孤独だった。このまま一人寂しく一生を終えるのだと思っていた。
だけどあの日、一人ぼっちだった私に、公爵様は手を差し伸べてくれた。
公爵様の手は救いの手だ。
私を孤独という闇から救い出してくれた、唯一の光。
その時、正午を知らせる鐘の音が響いた。
「あ、そろそろ来られる頃ですね!」
リディアの声とほぼ同時に、ガチャリと部屋のドアが開いた。
「マリエーヌ、早く君に会いたかったよ。今日は天気がいいから中庭で食事をしようか」
幸せそうな笑みを向けて、今日も公爵様は昼食の誘いにやってきた。
公爵様は私の手をとり、その甲にキスを落とした。
「マリエーヌ、愛しているよ」
あの日以来、その言葉を何度聞いただろうか。
それなのに、公爵様はとても嬉しそうにその言葉を私に贈り続けている。
私もいつか、あなたにその言葉を贈りたい。
私もあなたを喜ばせたい。
私に幸せを運んできてくれたあなたを幸せにしたい。
その日はきっと遠くない。
名前を呼ばれる度に高鳴るこの鼓動の理由は、きっとそういう事でしょう?
だけど、どうしても分からないのです。
公爵様。
一体あなたに何があったのでしょうか?