7日後の約束は〇〇…秘密を抱えた2人の奇跡の恋物語…

「ずっと、翔次が最後に私に言った言葉が頭から離れないよ」
「え? なにを言われたの? 」

「至らない息子で、ごめんなさい…。そう言っていたよ」
「翔次が、そんな事を? 」

「翔次のどこが至らないって言うんだ…。あんなに素晴らしい息子は、どこを探してもいないと私は今でも思っている」

 疾風には翔次の気持ちがよく分かったようだ。
 昔、疾風も無実の罪を着せられずっとからの閉じこもっていた事があった。
 他人に成りすまして生きていたが、どうしても宗田ホールディングに関わらなくてはならず父の元へ行く事になった。
 その時、父は何も言わなくても疾風が自分の子供である事に気づいた。
 名前も変えて顔も整形していた疾風に気づくとは驚いたが、ずっと信じていたと言ってくれた父の言葉が嬉しかったのだ。

「翔次はまるで、全てを分かっていたようだった。あの時、撃たれることも知っていたようだった」
「そうね、昔から。先の事を見通していたようだったもの」

「悔やまれる事ばかりだけど、翔次が残してくれた孫たちには同じ想いは絶対にさせないようにしょう」
「そうね」



 夜になり。
 奏弥は喪服を着て女子社員のお通夜に参列した。
 
 みんなが悲しみに包まれる中、あの祥子もお通夜に来ていた。
 黒い喪服に身を包んでいる祥子だが、どこか目が笑っているように見えて気持ち悪い。

 お焼香を終えた奏弥が葬儀会館から出てくると、祥子がいた。

「あら、副社長もいらしていたのですか? 」
「ああ、明日の葬儀にはどうしても抜けられない会議があるので」
「そうですよね。でも、あっけないですね。つい最近まで、元気にはしゃいでいたのに」
「そうですね」
「でも、副社長。これで安心ですね」
「え? 」

 祥子はニコっと笑って奏弥の近くへと歩み寄って来た。

「だってあの人、副社長に着きまとっていたじゃないですか」
「着きまとう? 」
「私、何度か見ましたよ。嫌がる副社長に、無理やり近づいて来て腕を組んだり。抱き着いて来た事もありましたよね? 」

 そんな事はなかったが?
 なにを言っているのだろう?

「亡くなった人を悪く言うのは、気が引けますけど。他の男性社員も、着きまとわれていたようです。男なら、誰でもいいのかしら? 」
 
 変な話だ。 
 そんな噂、俺は聞いたことがないけど。

「ねぇ、副社長。この後時間ありますか? 」
「あ、いや…」
「せっかくなので、ご飯でも食べてきませんか? 」

 亡くなった人のお通夜に来ているのに、笑顔で食事に誘うなんて…ちょっと異様な感じがする…。
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