7日後の約束は〇〇…秘密を抱えた2人の奇跡の恋物語…
金奈総合病院。
奏弥は頭を強打して5針ほど縫ったが、一命はとりとめた。
一時は出血多量で危険だったが、疾風が輸血したおかげで助かった。
他には右腕を骨折していて、左足首を骨折しているだけで他には異常はない。
だが…。
「え? 記憶喪失ですか? 」
別室に呼ばれた疾風が男性医師と話していると、奏弥が記憶喪失になっていると聞かされた。
自分の名前も覚えていなかったが、社員証を見せると思いだしたようだ。
しかし何故怪我をしたのかは全く覚えておらず、一緒に転落した女性の事も分からないと言っているようだ。
「今は、怪我をしたばかりなので。ショックも大きく、記憶が曖昧かもしれません。ですが、自分の名前も確信しているようではないようです。骨折もあるので、1ヶ月は入院して頂く事になりますが。記憶の方は、どうなるか保証は致しかねますので。暫くゆっくりとさせてあげて下さい。大怪我で、気持ち的にもショックが大きいと思われますので」
「分かりました」
話を終えると、疾風は奏弥の病室へと向かった。
5階にある個室に移された奏弥。
意識は取り戻したようだが、何も分からず不安な目をしてベッドを半身起こしていた。
麻酔が冷めてきて、あちらこちらの痛みが走るようで、時折顔をしかめている。
「奏弥、大丈夫か? 」
疾風がやって来て声をかけたが、誰なのか判らないような顔をしていた。
「私は、奏弥の父親。名前は疾風だよ」
「父親…はぁ…」
なんとなく覚えがあるような目をしているが、よく分からない顔をしている奏弥は、真っ暗な闇を見ているようだ。
「しばらく入院だ。ゆっくりすると良いよ、仕事の事は何も心配する事はないから」
「…はい…」
これほど自信がない顔をしている奏弥を見るのは、疾風は初めてだった。
どんなに体が弱くても、いつも自信にあふれていた奏弥だった。
何も分からない闇を見ているようで、不安なのだろうと感じる。
一方、祥子の方は…。
顔全体を包帯で覆っていて、左足を複雑骨折しているようだ。
手術はしたが、骨が上手くくっつくかどうかは不明らしい。
包帯で覆いつくされている顔は、見るに見かねるほどぐちゃぐちゃになってしまい、まるでお化けのようになってしまったようだ。
一命をとりとめても表を歩けなくなったと、ぼやいている祥子。
「やはり、お前は我が家では出来損ないだったようだな」
祥子の地父親である末盛家党首・末盛剛三(すえもり・ごうぞう)が駆けつけてきたが、娘が大怪我をしていると言うのにとても冷たい顔をして見下した目で見ている。
「男と一緒に心中でもしようとしたのか? 私が言う通りに、結婚していればこんな事にはならなかったはずだ! 」