7日後の約束は〇〇…秘密を抱えた2人の奇跡の恋物語…

 厳しい言葉を言われ、祥子は悔しい気持ちが溢れてきたが涙は出てこなかった。
 またいつものように私をバカにして罵倒しているのだ…好きなだけ言えばいい…。
 そう思って何の感情も湧かないように、グッと押さえてしまった祥子。

「お前はもう我が家には必要ない。退院したら、好きにしたらいい。お前の為に貯金していたお金は、全て渡す。そのお金で一軒家を購入するなり、どこにでも行けばいい」

 フン! と鼻で笑った剛三。
 そんな剛三を祥子はゆっくりと見あげた。

「…必要ない。…それは、ただの道具だったからですか? 」
「なに? 」

「あなたにとって子供は、ただの道具。兄さんも、貴方の名誉のために名門大学に進み、貴方の言いなりになって就職して今では次期社長と呼ばれている。…でも私は、貴方の言いなりにはならなかった。いえ、正確にはなれなかった…。私には私の人生がある。そう自分の声に従っていただけです。…亡くなったお母さんも、好きに生きて良いと言ってくれました。…」
「それがどうした、しょせん女なんて男がいなければ生きて行けない。お前も男に縋ろうとしていたじゃないか」

「ええ、そうです。それは一番だと思っていました。でも…違いました…」

 フッと小さく笑った祥子。

「男は縋るものではない、愛するものだと目が覚めました」
「愛するもの? 」

「貴方に何を言っても分からない。もういいです、貴方が望むよにします。…帰って下さい…」

 剛三はじっと祥子を見つめた…。

「お前は母親にそっくりだ。…私は、彼女の愛にあこがれて結婚したはずだったが…」
 ふと、剛三が悲しげな目を浮かべた。

 初めて見せる剛三の表情に、祥子はちょっと驚いていた。

「…彼女にそっくりな、お前を見ているのが辛かった。…」

 え? 
 私が邪魔だったわけじゃないの?

 祥子はそのままじっと剛三を見ていた。

「…女なんて…そう思わないと、私は生きて行けなかった。…妻を病気で死なせてしまったのは、私の責任だとずっと自分を責めていた。…女を下げて見ないと、自分が壊れそうだった。…これが、私の本音だ…」

 お母さんは、病気になり私が小学生の頃に亡くなった。
 けど、お父さんの事を一度も悪く言った事はなかった…。
 もしかして、お母さんの事がショックだったから私を見ようとしていなかったの?

 答えを求めるように証拠がじっと見ていると、剛三の顔がどこか悲しそうに揺れていた。

「こんな父親で悪かったな。…こんな父親の傍にいれば、ろくな事はない。…お前は、幸せになりなさい。私の事なんて、忘れていいから。素敵な男性と結婚しなさい…」

 そう話す剛三の横顔が、今にも泣きそうな顔に見えて祥子は胸が痛んだ。

(祥子、幸せになってね。…お母さん、貴女の母親になれて幸せだった。…お父さんとは、幸せにはなれなかったようだけど。貴女の母親になれたのは、お父さんが結婚してくれたおかげだから…。感謝いっぱいよ…)」

 母親がなくなる数日前に、祥子に言った。
 いつも剛三に尽くすばかりで、本音を言えず辛そうだった母を見ていて、祥子は不幸な人だと思っていた。
 しかし母はいつも笑顔で怒られた事は一度もなかった。
 剛三が「女は結婚しか能がない。金持ちと結婚しろ」と祥子に言っていたが、母は「心から愛せる人と結婚しなさい。お金だけあっても、愛が無ければ寂しいだけよ」と言っていた。
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