7日後の約束は〇〇…秘密を抱えた2人の奇跡の恋物語…
今ここで幸せになる事
ようやく奏弥が退院できたのは、梅雨が明ける7月に入る頃だった。
怪我も傷跡が残らずすっかり良くなり、手足も元通りになった。
奏が迎えに来て、奏弥はそのまま宗田家に行く事になった。
荷物はおいおい運んでくることにして、記憶も曖昧な事から宗田家で一緒に暮らす事になった奏弥。
奏弥が宗田家に戻ると同時に、凛太朗と聖龍も宗田家に来ることになった。
まだ保育園に行っている凛太朗と聖龍だが、部屋もちゃんと用意されている。
「今日から、凛太朗君と聖龍君が我が家に来るのよ。楽しみだわ」
お茶を用意しながら奏が嬉しそうに言った。
「…ねぇ、母さん。…凛太朗君と聖龍君のお母さんって、どんな人なの? 」
奏弥に尋ねられると、奏は少し辛そうな目を浮かべた。
「凛太朗君と聖龍君のお母さんは、凛さんと言う人で奏弥より年上の人よ」
「年上…」
「奏弥と同じ弁護士の人」
「そうなんだ。…もしかして、前の職場で知り合った人なのかな? 」
「うん…そんなところかもしれないわね」
奏は強いて凛太朗と聖龍が翔次の子供である事は、言わなかった。
いつか記憶が戻った時、奏弥はその事実を知るだろうが、今は凛太朗と聖龍が自分お子供だともいこんでいた方が幸せそうに感じたのだ。
翔次の子供である事を思い出したとしても、きっと凜太郎と聖龍への気持ちは変わらないと確信できる。
ただ…。
凛の本当の気持ちはどうなのかは、まだ判らない。
凛太朗と聖龍は宗田家で暮らすようになったが、凜はまだ一緒には住めないと言われた。
奏弥の記憶が戻るまでは、混乱を避けるためにもできるだけ距離をとりたいと凜は言っていた。
夕方になり奏が凛太朗と聖龍を迎えに保育園に向かった。
来週からぼちぼちと仕事を復帰する予定の奏弥は、パソコンを見てメールチェックから始めていた。
秘書であった祥子が逮捕され、新しい秘書として派遣会社から男性の秘書が入ってくる予定になっている。
メールをチェックしながら、何となく仕事の内容は思い出せてきた奏弥。
手帳を取り出す為、机の引き出しを開けてみると、一通の手紙が入っているのが目に入った。
白い封筒で、まだ開封していないものだった。
宛名には「兄貴へ」と書かれていた。
そして差出人には「翔次」と書かれていた。
「翔次からの手紙? 」
未開封の手紙に、何故か胸がドキドキして奏弥は開封した。
もしかしたら、この手紙に重要なことが書かれているかもしれない。
そう期待しつつ、奏弥は手紙を読み始めた。