7日後の約束は〇〇…秘密を抱えた2人の奇跡の恋物語…
「何も心配しなくていいから、僕にも担当医がいる。任せてあるから、大丈夫だから」
「大丈夫なんて言うな! 俺だって、ずっとお前の事を見てきている。どのくらい進行しているかくらい、言われなくても分かる」
「それでも、もういいから。兄貴は、自分の幸せを考えてくれ。僕は、兄貴が幸せであればそれで構わないから」
そっと微笑んだ翔次の目が、とても悲しげに見えて奏弥はズキンと胸が痛んだ。
「翔次。俺の幸せは、俺自身が幸せになる事と家族みんなが幸せでいてくれる事だ。それに、お前にも大切な人がいるじゃないか」
奏弥はそっと凜を見た。
凜は少し申し訳なさそうに、スッと視線を落とした。
大切な人…そう思われても、この状況では仕方がないけど。
私はこの人を殺そうとしているだけの居候だから…。
そう思いながら、凜はチラッと翔次を見た。
翔次の目がメガネの奥で悲しげに揺れているのが見えた…。
僕だって…もっと生きていたいと今は思う。
けど、もうどうにもならないから…せめて、彼女の辛さだけは持っていこうと決めている。
今更、どこの病院へ行っても同じ事だから。
「兄貴の気持ちは嬉しいけど、これは僕が決めた事だから。このまま、静かに時を過ごさせてほしい…」
グッと感情を押さえて翔次は言った。
「そうか…。それなら、俺はお前が静かに過ごせるように全力を尽くす。だから、ここに遊びに来てもいいか? 」
「え? 」
「いや、お前の邪魔をする気はない。ただ…もう、距離を置くのは嫌なだけだ」
「距離を置いていたつもりはないけど…」
「そうだな。でも、俺が来たいときに来たいって事だ」
「ああ、それなら構わないけど」
「良かった。断れなくて」
笑いを浮かべた奏弥は、鞄から小さな黒い瓶を取り出しててーブルの上に置いた。
「これ、頼まれていた物だ」
「あ…これが例の物? 」
「これを使えば大丈夫だ」
翔次は瓶を手に取った。
「有難う、兄貴…」
瓶をギュッと握りしめた翔次の目が潤んでいた。
そんな翔次を見ると奏弥の目も潤んできた。
「桐野宮さん」
声をかけられると凜はハッとなった。