7日後の約束は〇〇…秘密を抱えた2人の奇跡の恋物語…
「もう、誰も桐野宮さんを責めたりしていませんから。戻って来て下さい」
戻って来て下さいと言われると、凛の頭の中にぼんやりと声が聞こえて来た。
(法廷で被告人が自殺? )
(被害者の姉も自殺? )
(しかも、同じ毒薬を持っていたなんて…)
(前代未聞だ、こんな事)
法廷で被告人と被害者の遺族が自殺。
この事件は大きく報じられた。
女子高校生を刺殺した当時24歳だった医学生が、殺人の容疑で起訴された。
初めは無罪を訴え出ていた医学生だったが、隠し通していた嘘が明るみになって来た事から法廷中に隠し持っていた毒薬を飲んで自殺した。
それと同時に、被害者の遺族である女子高生の姉、当時24歳の同じ医学生も毒薬を飲んで傍聴席で自殺した。
その時。
医学生の弁護についていたのが、凛だった。
凛は弁護士になって年6目。
国選弁護人を経て、個人を請け負う弁護士へ移行してきた事から法律事務所へ就職した。
その就職先が奏弥がいる法律事務所だった。
奏弥は弁護士になりたてだったが、国際弁護士まで出世していて、凛から見れば手の届かない腕利きの弁護士に見えていた。
自分とは世界の違う人。
親の影響から弁護士になったものの、凜はあまり表だったことを好まず国選弁護人を選んでいた。
しかし、凛はどんなに極悪人であろうとも最後まで味方でいる心優しい弁護士として噂になっていた。
死刑を言い渡された被告人を、懲役15年まで刑を軽くした事もあり、逮捕された時は救いようのない犯罪者だった被告人が裁判では別人のように素直になり自分が犯した罪に涙していたくらいだった。
そんな凜の噂を聞きつけて、個人の依頼人が増えて来た事から国選弁護人の仕事よりも事務所に所属して仕事をするのがいいと言われるようになった凜。
初めは幸治の事務所で働くように言われたが、親の元では甘えてしまうと言って全く知らない場所で仕事を希望した凜。
事務所に所属したからと言って、急に依頼人が増えるわけではなく、初めは誰もが避けたい案件ばかりが凜に振られてばかりだったが、どんな依頼人にもとても親身になっていた凜。
そんな凜を見ていた奏弥は、次第に凜の事を気にかけるようになった。