7日後の約束は〇〇…秘密を抱えた2人の奇跡の恋物語…
考え事をしていた凜が、ふと時計を見ると10時を過ぎていた。
どのくらい考え込んでいたのだろうか?
ふと食卓を見ると、お弁当が2つ置いてあった。
1つは赤いチェックのハンカチで包んである凜の分。
もう一つは、黒いチェックのハンカチで包んであるお弁当。
「もしかして…」
食卓の上にあるお弁当箱を手に取った凜は、黒いチェックの包みは翔次のお弁当であると確信した。
朝から奏弥がきてバタバタしていた事で、忘れて行ったのだろうか?
いつも忙しそうにしている翔次。
お昼休みに外に出る時間はあるのだろうか?
迷っていた凜だが、翔次にお弁当を届けるために外出することにした。
宗田ホールディング。
副社長室では、1日休みを取った翔次が溜まっている仕事に追われていた。
秘書を設けていない翔次は、全ての事を自分一人でやっている。
いつ用な書類にサインをしてた部署へ持っていく事も、自分でやっているのだ。
コンコン。
忙しそうに翔次が書類にサインをしていると、ノックの音がした。
「翔次、入るぞ」
やって来たのは疾風だった。
紺色のスーツ姿にえんじ色のネクタイに黒皮の靴。
キリッとした切れ長の目は、メガネを外した時の翔次に似ているような気がする。
もう60代になる高齢ではあるが、とても若々しく女子社員からかなり好感が高い。
「どうしたんですか? 社長」
メガネの奥で翔次の目が怪訝そうに変わった。
疾風は翔次の机の上に溜まっている書類を見て、小さくため息をついた。
「これだけ仕事が溜まっていては、大変ではないか? 誰か、秘書をつけてはどうだ? 」
「いいえ、結構です。それより、用件は何でしょうか? 」
他人行儀の言葉を放つ翔次に、疾風はゆっくりと歩み寄って来た。