7日後の約束は〇〇…秘密を抱えた2人の奇跡の恋物語…
退院の手続きが終わり翔次達が病院を出て来たのは、10時を過ぎる頃だった。
奏弥はこれから事務所へ戻ると言って、そのまま駅へ向かった。
奏でも疾風の下へ向かう為に奏弥と一緒に駅へ向かった。
翔次と凜はマンションへ戻る事にした。
一度家に戻って、それから翔次は仕事に向かうと言っている。
家に戻った翔次はシャワーを浴びて出勤準備をした。
「今日は、お弁当は忘れないで持ってゆくからね」
ニコッと笑ってお弁当を鞄に閉まった翔次。
「それから、これ書いてもらえる? 」
テーブルの上に翔次が置いたのは婚姻届けだった。
どうして? と、凛は驚いた目を翔次に向けた。
「あと2日だけど。彼女じゃなくて、夫婦として一緒にいたいと思ったから」
「どうして? 」
「だって、元々僕と凜さんはお見合いして結婚する予定だったんだから。入籍したいと思ってね。勿論、
あと2日過ぎたらいつでも離婚していいように、離婚用紙も用意してあるから安心して」
「だから…どうして、そうなるのですか? 」
え?
と、翔次は意味が分からない目をした。
「私が貴方を殺す理由は、父と母を助けるためでした。でも、さやかが逮捕され父も母も助かりました。なので…」
「それでも、約束は約束だから」
「その後は…一人で死んでゆくつもりなのですか? 」
ふと、目を曇らせて翔次は黙ってしまった。
「夫婦になるなら、最後まで一緒にいさせて下さい。ダメですか? 」
ダメじゃないけど…死んでゆく姿を、誰かに見てもらう事なんて、考えてなかったから…。
「ごめん、少し考えさせてくれないなか? 2日後には答えを出すから、それまでは約束通りでいて欲しいから」
「…はい…」
しっくりこなかったが、凜はとりあえず言う通りにした。
食卓の上にあったペンで必要事項を記入して、印鑑を押した凜。
「有難う。じゃあ、さっそく提出しておくから。帰ったら、お祝いしよう」
記入された婚姻届けをもって、翔次はそのまま仕事へ向かった。
一人になった凜は少し考えこんでいた。
さやかの命令で、父と母を助けるためだとしても翔次の命を狙った事は間違いない。
拳銃なんて一般人が手に入れられないものを手にして、銃口を突きつけたのは事実。
さやかが逮捕され、今までの悪事が明るみになったとしても自分だけ何もなかったかのようには暮らす事はできない。
銃刀法違反? 殺人未遂? 脅迫? どれにも値するかもしれない事をしたのは、事実…。
その事実に目を背けて生きて行く事はできない。
凜はそう思ったのだ。