7日後の約束は〇〇…秘密を抱えた2人の奇跡の恋物語…

「副社長、どうぞ飲んで下さい」

 どこかの部署の男性社員が、珈琲を買って持って来てくれた。

「結構ですよ、お気遣いなく」
 と、翔次が言うと男性社員はやれやれと笑った。
「素直にもらって下さいよ。珈琲くらい、誰かに入れてもらって良いのですから」
「でも…」
「いつもゆっくり食べていらっしゃいますね、遠くから見ていましたよ」
「はぁ…そうですか…」
「副社長は、人に甘える事が苦手なんですね。自分もそうなので、よく分かります」

 甘える事…確かに苦手だ。
 小さな頃から、兄貴が病気ばかりしていて父さんにも母さんにも甘える事はできなかったからなぁ…。

「昨日、救急車で運ばれた時はびっくりしました。でも翌日には戻って来るなんて、無理しているとしか思えません。この会社には、副社長以外の社員もいるのですから。遠慮しないで、もっと甘えてくれていいんですよ」
「そうですね…」
「お身体お大事になさって下さいね」

 去って行く男性社員を見ながら、翔次はふと自分が死んだらここの社員はみんな泣くのかな? と…。

 今まで距離を取って来たのは、後は継がないと決めて形だけの就任をした事もあった。
 それから病気が判り余命宣告されてから、深入りする事はないと思っていた。

 しかし今になって社員の方から歩み寄って来るとは、翔次にとって想定外の事だったのだ。


 
 午後。

 凛の下に病院から電話が入り、幸治も友里も意識を取り戻しICUから病棟に移ったと連絡が入った。
 容体は安定していて、順調の回復できれば来週には退院できそうであると言われて、ほっとしていた。


 一方。
 逮捕されたさやかは、容疑を否認していたがICUにいる幸治と友里になんども無断で注射をしている姿が録画されていた。
 必要な薬を注射していたとさやかは言ったが、病院側はさやかに担当は頼んでおらず幸治も友里も注射は必要なかったと証言している。
 2人が運ばれて来た時、病院側では食中毒と診断をしたが不審な薬のような物も検出されていた事から様子を見ている所だった。

 そして奏弥の事務所にやって来たさやかが、奏弥の飲みもに何か薬のような物を入れているところも録画されており、その後に奏弥が苦しみだしたところ、さやか自らが毒を盛った事を呟いていることも録画に残っていた事から、容疑は間違いないと断定された。

 さやかは看護師になってから、病院を転々としている。
 退職の理由は人間関係のが多かった。
 そしてトラブルに巻き込まれた相手は、数日後に不審死している事が多かった。
 心不全で亡くなる人が多かったが、中には体内から毒薬が検出されている人もいた。
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