7日後の約束は〇〇…秘密を抱えた2人の奇跡の恋物語…
「誰かと一緒に食事するのは、とっても久しぶりだよ。今日は、ご飯が美味しい」
嬉しそうな翔次を見ていると、凛は何故かホッとした気持ちになれるのを感じた。
(宗田翔次を殺しなさい…そうしないと、あんたの両親は死ぬわ…)
ハッと悪魔の囁きのような声が凜の頭をよぎった。
そうだ…この人を殺さないと…お父さんとお母さんが死んでしまう…。
「どうしたの? 凛さん」
「え? 」
「顔色が良くないけど…」
「い、いえ…」
冷静に悟られないように…私には猶予はない…
14日以内に殺さないと、お父さんもお母さんも死んでしまうから。
7日間一緒にいてって言われたけど…銃殺以外でもチャンスはありそう…。
冷静を装い、凜は内心そんな事を思っていた。
食事が終わりあとかたずけになると。
「洗い物は私がやります。作って頂いたので、そのお礼です」
「あ…」
ふと、翔次は凜の手を見た。
さっきは暗闇で気づかなかったが、凛の手は手荒れが酷い状態だ。
皸が酷くなりとても痛々しい手をしている。
「いいよ僕がやるから、凛さんはお客さんだから気を使う事はないよ。座ってて、洗い物が終わったらお風呂用意するからね」
ニコッと笑って翔次は、食べ終わった食器をシンクに運んで洗い物を始めた。
凛はそっと翔次の背中を見つめた…。
(いつまでやってんの? さっさと洗いなさいよ! お湯なんて使ったら、承知しないわよ! )
凜はいつも家事を押し付けられていた。
冬の寒い中でも冷たい水で洗い物をしていたせいで、手はいつも皸だらけで、ハンドクリームを買うお金もなく痛みをこらえて家事をこなしていた。
皸が切れてしまっても、そのまま放置している事が多く気づけば手が血だらけになっている事も少なくなかった。
誰かに洗い物をしてもらえるなんて…どのくらいぶりだろう…。
翔次の背中を見つめて、凛はちょっとだけ胸が痛んでいた。
洗い物が終わると、翔次はお風呂を用意してくれた。
お湯の温度調整や、シャワーの使い方も丁寧に教えてくれて着替えまで用意してくれた。
「これ、取引先から試供品でもらったものだけど。母さんには派手すぎて使えなくて、あげる人もいなかったから僕がずっと持っていたんだ。使っていいよ」
高級ブランドの紙袋に入った、数着の下着とキャミソールを渡され、凛は驚いていた。
派手と言っているが、清楚な白と爽やかなブルーと可愛い系のピンク、キャミソールも落ち着いたネイビーや黒や白が入っている。
お母さんと言うくらいの年齢なら、もう50代後半くらいかもしれないが、まだ使える色柄だと思うが…。
「有難うございます…使います…」
着替えを用意していない凜は、仕方なくそれを使う事にした。