7日後の約束は〇〇…秘密を抱えた2人の奇跡の恋物語…
17時を過ぎ、翔次は帰り支度をしていた。
もう仕事には戻れないと決意した翔次は、誰にでも引き継げるように自分の仕事内容を丁寧にノートにまとめていた。
パソコンのパスワードも分かるように記載されていて、思い残すことが無いようになっていた。
「…死ぬ事は怖くないけど。…今更だけど、凜さんと離れる事は嫌だって気づいたよ…。でも、これが一番だから…」
少し名残惜しそうにパソコンを閉じた翔次は、そのまま副社長室を出て行った。
エレベーターで1階まで降りて来た翔次。
エントラスを出て来た翔次は、じっと前を見つめた。
コツン…コツン…。
近づいてくる足音を耳にすると、翔次はフッと小さく笑った。
(緊急速報です。独自で作った毒薬で、無差別殺人を行っていた谷塩さやか容疑者が金奈警察署から脱走したもようです。取り調べ中の刑事の首を絞め、狂ったように暴れ出し逃走して現在指名手配中です。警察では、まだそれほど遠くには逃げていない模様で全力で捜査をしております。なお、谷塩容疑者は警察官から警棒と拳銃を奪って逃走している模様です)
駅前の巨大ビジョンから流れて来た緊急速報が聞こえて来た翔次は、やっぱりそう来たかと口元の笑みを浮かべた。
「あら、随分と元気そうね? あの毒薬、かなり濃度を上げて注射しておいたんだけど」
足音がピタリと止まり姿が露になった人物は、まさに逃走してきたさやかだった。
逮捕された時よりは地味なグレーのブラウスに黒いスカート。
履いている靴は、かかとがない黒い靴。
化粧はすっかり落ちてしまい、年齢があらわになるスッピンで派手に巻いていた髪は後ろで束ねている。
「残念だったね、せっかく注射してもらったのに。どうやら、僕には効果がなかったようだね」
「そう。それじゃあ、絶対に死んでもらう為に…」
スッと銃を手に、さやかは銃口を翔次に向けた。
「凜の奴が、なかなか殺してくれないって思っていたら。あんたに、たぶらかされていたのね。凜は免疫ないから、直ぐに落ちたって所かしら? 」
銃口を向けられても、翔次はビクともしないままさやかを見ていた。
「凜より私の方がずっと魅力的でしょう? あの子はね、法廷で依頼人を殺している性悪女よ。そんな女と結婚なんかしたら、アンタの名誉に傷がつくって思ったんだけどねぇ」
「ご心配なく。僕は、それ以上の事をして来ているから。そんな話しでは、驚く事はないよ」
ピクっとさやかの目が怯んだ。