7日後の約束は〇〇…秘密を抱えた2人の奇跡の恋物語…
先に愛したのは…
お通夜の時間になると大勢の社員達が来てくれた。
あまり周りと関わらないようにしていた翔次だったが、社員達は気にかけていたようだ。
営業部にいた時に、一緒に仕事をした事がある社員は翔次は見かけによらず気遣いが出来て情の深い人だったと話している。
海外生活が長かったが、いろんな国に住んでみてやはり日本が一番いいと話していたようだ。
時折り、理不尽なお客がいるとキッパリ断る事もあり、引き際を見極めているようだった。
祭壇の遺影に飾られた翔次の写真は、メガネをかけていない素顔のままだった。
その写真を見た社員達は、疾風以上の美形だったことに驚くばかりだった。
お通夜が終わり深夜の見守りは、凜が一人で残る事にした。
葬儀会館で泊まる事になっているが、どうしても今夜は翔次と一緒にいたいと凜が言ったのだ。
棺の中の翔次は死に化粧をしてあり、まるで眠っているかの様だ。
メガネを外した翔次の素顔を何度も見ているのは、きっと凜だけなのかもしれない。
「…本当に、7日後に殺されるって言っていた通りになったんだね…。もしかして、全部知っていたの? 姉さんが脱走してくることも、貴方を殺しに来ることも…。それで、私と入籍してくれていたの? 」
何も答えない翔次に、凜は問いかけていた。
「あの時…怪我をした私を助けてくれた時。今まで感じたことがないくらい、胸がキュンとなったのを思い出したわ。…あの夜、貴方を殺す為に屋上に行って。振り向いた貴方を見た時も、同じだった…。でもね、何か前にも同じ気持ちを感じたことがあるような気がするの。…貴方と同じ温もりで、同じような気持ちを私に与えてくれた人がいたような気がする…」
冷たくなった翔次の頬に触れた凜…。
「もし、貴方とお見合いしてそのまま結婚が決まていたら。殺す目的で、近づく事もなかったんだよね? …自分の事が許せなくて、自首したのに…貴方は殺されそうになんてなっていないって、言ってくれて…。拳銃も、おもちゃにすり替えられいた…。もしかして、何もかも貴方の計画だったの? 」
何も答えてはくれない翔次だが、穏やかに眠る表情を見ていると全てを許してくれているように思える。
暫くして。
翔次と話していた凜は、いつの間にか眠っていた。
畳の上でそのまま寝てしまった凜の下へ、そっと足音を立てないように奏弥がやって来て毛布をかけた。
「…忘れていてもいいよ。…俺はずっと忘れないから…」
眠っている凜の頬にそっと触れた奏弥…。
「翔次安心しろ。お前が望んだこと、俺が叶えるから…」
翔次の遺影に向かって語った奏弥は、そっと微笑んだ。
翌日には厳かに翔次の葬儀が行われた。
親族だけではなく、社員達や翔次が昔から親しくしている大勢の仲間が見送ってくれた。
見かけによらず翔次には多くの鴎友関係があったようで、政治家の人や芸能人までお焼香に現れ驚かれていた。
火葬が終わるとお骨は一旦宗田家に持ち帰る事になった。
49日が終わるまでは納骨しないで、家に置いておくと疾風が言い出したのだ。
ずっと、奏弥に遠慮して翔次はいえから離れていた分、ゆっくり家に置いてあげたいと言っている。
凜は幸治と友里の退院が決まった事で、一度家に戻る事にした。