7日後の約束は〇〇…秘密を抱えた2人の奇跡の恋物語…
奏弥はカクテルを一口飲んだ。
甘くて爽やかな味が口の中に広がり、スーッと何かが引いてゆくような感覚を感じてホッとした気持ちになれた。
「美味しいですね、このカクテル。初めて呑みました」
グラスを見つめて凜は黙っていた。
そんな凜を見ると、奏弥の胸がズキンと痛みを感じた。
「あの。桐野宮さんも、ここによく来るのですか? 」
小さく首を振った凜…。
「お酒なんて…飲んだことありません…」
「え? 」
言われてみると、凜のグラスの中のカクテルは量が減っていなかった。
何杯か飲んでいるようには見えず、グラスを口にしてもなめる程度しか飲んでいないようにみえた。
「…いつも、私は家政婦のようにしか扱われませんから…」
家政婦? なにを言っているのだろう? と、思った奏弥だったがふと凜の手を見ると皸だらけて痛々しい手をしている。
「自分の家なのに…いつも、冷たいご飯しか食べれなくて…お風呂も、残り湯しか入れない…。家政婦の方がまだ、マシなのかもしれませんね…」
そう言った凜は、グイッとカクテルを一気に飲み干した。
あ…そんな飲み方したら…。
と、奏弥が心配した矢先に凜は頭を押さえた。
「大丈夫ですか? 」
「…大丈夫です。気にしないで下さい…」
そう言いながら、スッと立ち上がった凜。
「ごめんなさい、私なんかの隣に座らせてしまって。…素敵な彼女の下に、行って下さい…」
それだけ言うと、凜は去って行った。
「ちょっと、待って下さい! 」
去ってゆく凜を追いかけた奏弥。
会計を済ませて、凛はそのまま外へ歩いて来た。
呑んだカクテルがまわってきたのか、足取りがフラフラしているようで転びそうになりながらも、しっかり歩こうとしている凜。
追いかけて来た奏弥は、そんな凜を見て傍に駆け寄りそっと抱きとめた。
「危ないですよ、大丈夫ですか? 」
「気にしないで下さい。…一人で、大丈夫ですから」
「そんな事言わないで下さい! 一人で大丈夫な人間なんて、この世にいませんから」
フラッと倒れそうになった凜を支えた奏弥。
お酒のせいで酔ってしまったのか、身体に力が入らない様子の凜をみて、このまま一人で帰すわけにはいかないと奏弥は思った。